九響首席クラリネット奏者・宇根康一郎が東京オペラシティ B→Cに登場

©熊野輝男

 近年、地方オーケストラの技量アップが目覚ましい。なかでも管楽器には在京楽団に勝るとも劣らぬ名手が少なくない。その一人、九州交響楽団の首席クラリネット奏者・宇根康一郎が、精鋭の証ともいえる東京オペラシティの「B→C」に出演する。1991年沖縄生まれの彼は、沖縄県立芸大を卒業後、ドイツのフランクフルト音大に留学。桐朋オーケストラ・アカデミーでも学び、2022年から九響の首席奏者を務めている。

 「東京での2時間ほどのリサイタルは初めて」と語る今回は、フランスや留学で感じ取った本場の空気感を反映するドイツの作品に、沖縄県立芸大の先輩・西森久恭へ“沖縄らしさを感じられる曲を”と委嘱した新作を加えたプログラム。技巧的ながらも民謡的なエッセンスを感じさせるタンギー、エスプリ溢れるフランセ、「緩急があって様々な風景が出てくる」ジャズ・タッチのデュサパン、特殊奏法が炸裂するヴィトマン、20世紀のクラリネット作品を代表するヒンデミットと、多種多彩な内容が目を引く。恒例のバッハは、フルート・ソナタBWV1031を選曲。「クラリネットに音色が合い、温かな雰囲気がある」との理由によるセレクトだが、当時なかった楽器がもたらす新鮮な感覚が実に興味深い。

 彼の演奏は「音楽に素直」と言われるとの由。「作品や楽章ごとに色彩を変化できるように表現したいと思うので、そこを聞いていただければ」と語る今回の公演(沖縄でも開催)は、東京で接する貴重な機会となる。ここは普段耳にし難い名技と伸びやかな演奏、そしてクラリネットの柔軟で豊かな表現力を満喫したい。

文:柴田克彦

(ぶらあぼ2025年7月号より)

東京オペラシティ B→C 宇根康一郎(クラリネット)
2025.7/12(土)14:00 沖縄/アイム・ユニバース てだこホール(小)
問:アイム・ユニバース てだこホール098-942-4360


2025.7/22(火)19:00 東京オペラシティ リサイタルホール
問:東京オペラシティチケットセンター03-5353-9999 
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